里山帰農塾は文字通り、里山での農的な生活を楽しむための方法を学ぶ教室です。
農業や農村での生活に関係のなかった都市生活者を対象に、
農業技術に対する講義や農業体験だけでなく、里山の生態や山林の利用の仕方、
村の生活、村人とのつき合い方など里山での生活の仕方全般を学びます。





鴨川の自然があなたを待っている!!  
農的生活に関心のある方、環境保全型生活を希望する方の参加をお待ちしています。

お申込・お問い合せ・スケジュールは→ふるさと回帰支援センターwebサイトから




2003年 第1回〜第4回
2004年 
    ・ 第1回 入門コース
   ・ 第2回 入門コース
   ・ 第3回 家作り専科
   ・ 第4回 中級コース
   ・ 第5回 入門コース
第1回 入門コース 2004. 5/28−30  text: 田中正治


男性7人、女性5人の塾生が参加しての、2泊3日初級コースでした。
9人が、いなか暮らし・農的生活・生き方探し、2人が、初級の農業技術を、1人が地元学を求めてが、参加の動機だとおもわれます。
参加した塾生の帰農塾への感想文は、添付をご覧ください。

● 「里山・棚田見学」では、まず田植えを完了した大山千枚田を見ました。都市からのアイディアを農村の人が、受け止めて、風土を生かした棚田のオーナー制、トラスト、凧揚げや蛍観察・・・のプロジェクトが次々と出来ていっていることに、都市と農村が、プラスの関係に転化できる姿を見た思いがしました。
棚田が次々に放棄され、荒れ果てている地域にも行きました。地主さんが来てくれて、“ちゃんと世話してくれる人がいれば貸してもいいよ”と言われてびっくり!でも“千枚田保存会に話しを通してね”ということでした。

● 甲斐講師の「帰農の時代と地元学」では、ミツバチの話で盛り上がりました。東京のど真ん中・大手町で養蜂は出来るとは!皇居の中の花から花粉を集めてくるんですってね。日本蜂蜜はお互いにダニの取りっこをするんですって。それにハチって、熊の分まで蜂蜜を作って置くそうです。そうしないと熊に荒らされてしまうので。“風土に合った生き物が、環を作って連なって生きているんですよ。人間もその環の中にいるはずなんですね“とおっしゃった甲斐さんの言葉が、印象的でした。ヤマメの話、水俣地元学の話、瀬戸内海大島でのお母さん、おばあちゃん達の”起業“の話など盛りだくさんでした。

● 「田舎暮らし成功の秘訣」の講義をしていただいた木下さんは、金土日と鴨川で晴耕雨読の田舎ぐらし、月〜金はCITY・東京で専門学校講師と都市と農村の往還を楽しんでおられます。いなか暮らしは、まず、1)頭の中での下準備、2)カミさんは大丈夫か?3)場所の決定と家作り、4)孤独にならない工夫、5)自給自足・・・・と、この3年間の悲喜こもごもを“公開“していただいた。不動産屋の紹介で竹やぶの原野を購入し、開墾、家を建て、昨年は、小屋(アトリエ的男の隠れ家)をこつこつ自分で設計し、建ててしまわれた。もう楽しくってしょうがないよ、という表情で話されるので、もうちょっとマイナス面を話してくださいという注文が飛んでいました。

● 「高野孟の21世紀的ライフスタイル」は、塾長でジャーナリストの高野さん。昨年鴨川に土地2000坪?を購入し、今年の秋には家を建ててしまうぞ!草刈りに励んでおられる。友人たちが、風車はこんなのがいい、この木は残すべきだ、馬の道はこうしようとか、勝手に構想を立てていて、一大プロジェクトに発展しつつあるとのことです。そんなわけで、講義の時間も忘れるほど草刈に夢中になり、大慌てで帰ってきて講義を開始。仙台市から車で15分行った里山での村人達の暮らしを記録したドキュメントをビデオで見ました。そこでは、数百年と続けられてきた“結い”の伝統が、形式は変わっているのですが生きていて、相互扶助の精神が受け継がれています。里山の恵みに沿って食料やエネルギーをもらい、必要以上のものは決して奪わず、自然の中に神が宿るという感謝の気持ちを特別なものとしてではなく、普通の生活として営んでいて、それが自然に対する人間の調和のありようを、さりげなく示していたのです。

● 田植えはやっぱり農的生活の原点。石田さんの田植えの仕方を神妙に聞いた後、わーわー、きゃーきゃーとにぎやかなひと時でありました(^^)。ほとんどの人が田植えは始めてでした。

● 「畑作業」は、元・JA営農指導員で、自然王国畑の技術顧問である川名さんの果樹園へいきました。もう少し早ければあのすばらしいミカンの花の香りを味わえたのですが、もう花も散って、ちっちゃな実が無数になっていました。無数にミカンがなれば、皆小粒になってしまうので、摘果します。枝一本に一個のミカンくらいにするのです。これは手でするしかないのです!次はブルーベリー。もう一ヶ月もすればおいしいブルーベリーが食べられたのに残念!このでも摘果作業だが、そんなに労力はつかわず、一気に全部完了しました。消費者はまさにおいしいとこ取りなんだな〜と実感させられました。

● 「豆腐づくり」は、ベテラン石田さんの指導で、一日水に浸した大豆をミキサーにかける作業から開始。ちょいとした技術の連続で、特にニガリをうつ豆乳の温度とニガリの量が決め手。そこをクリアすれば、まず大丈夫。各チーム、見事にクリア!夕食のおかずとして燦然と登場していただいたのでした。ほんのちょっと硬い、柔らかいがあり、お互い自慢のしっこをしたあと、おいしくいただいたのでありました。全て成功でした。

● 「交流会」で、初めてビールが登場。前後左右的コミュニケーションの盛り上がりのため、何が話されたかは、不明なのであります(^^)。

● 最終日の「討論・農的生活の期待と希望」では、田舎暮らし、農的生活ができたらいいな〜と、自分の生きがい探し、人生の選択を胸に参加された方が多いせいか、土と緑の中で生活したいという欲求が強いのに、驚きました。「自分の位置がわかれば、役割がわかる」という故・藤本敏夫の言葉が、今回のキーワードになったようです。二人の方から同じ不満がのべられました。“初級の農業技術を教えてほしかった”と。これに対して、石田さんからは、初級コースは、田舎ぐらし、農的生活の取っ掛かりをつかんでもらうのが目的で、農業技術の習得は、いずれ計画されるだろう農業学校のようなところで習得していただくしかない、との返答がありました。あと、もっと実技を、農家民泊をしたらどうか、女性の講師の経験談を聞きたい、お金がなくても田舎に移住した人の体験談を聞きたい、もっと定年帰農・団塊帰農の実例を、などが要望として出されました。

● 閉校式には、主催側の100万人ふるさと回帰運動の本多さんが駆けつけて来られ、ご挨拶。高野塾長からちょっと変わった修了証書を、皆さんいただいて、初級コースは、無事修了したのでありました。今回は、第五期生です。塾生の皆さん、お互いにメーリングリストをつくるのもよし、月一回の自然王国のイベントに参加して、もう少し深く入って見るのもよし。では、See you soon ですね。



里山見学


甲斐講師の講座


木下講師の講座


田植え


摘果作業


昼食


豆腐作り


高野講師の講座



ふるさと回帰・里山帰農塾修了証


環境と農の時代という21世紀の足音を察知し、自分らしいライフスタイルを創造するきっかけをつかむための里山帰農塾で、あなたは、田植えでは、幼い苗に自分のエネルギーを吹き込み、土に育ててもらう作業だということを実感されたに違いない。ブルーベリーやミカンの摘果作業では、技術の大切さと、課術の生命力が、秋には立派な実をつけるさまを想像されて、農業に楽しさを感じられただろう。豆腐作りでは、先人の生活の知恵を感じ取り、自分だって手作り加工品がつくれるぞ!と密かな自身を持たれたかもしれない。
 座学では、人類が直面する環境と生命の危機脱出方法に思いをはせ、自分の生き方・働き方を、定年帰農・青年帰農の実例とダブらせ、田舎暮らし・帰農生活者の悲喜こもごものユーモアの中に、真剣に自分を見つめ、自分の生き方を模索されていた。その姿に私たちは、共感を覚えると共に、鴨川で感じ、学ばれたことが、これからの人生に生かされると確信する。

 あなたは、5月28日から5月30日まで、千葉県・鴨川自然王国で開催したふるさと回帰・里山帰農塾第五期生として、2004年度第1回初級講座の全過程を修復されたので、ここに、修了証を授与します。
2004年5月30日
ふるさと回帰・里山帰農塾
塾 長  高野 孟
農事組合法人 鴨川自然王国
NPO法人100万人のふるさと回帰・
循環運動推進・支援センター
理事長  立松 和平

       
第2回 入門コース 2004. 7/17−19  text: 田中正治


主催者の100万人ふるさと回帰センターの本多さん、塾長の高野 孟さんの挨拶のあと、「帰農への想い・自己紹介」。参加した塾生は、50歳代の方が6人。数年先の定年をにらんで、田舎暮らし帰農へのきっかけやこれだ!という何かを見つけたいと参加した人たち。30歳台が4人。精神的にも肉体的にも不健康な現在の生活を立て直したい、将来の生き方を見つけたいという方が多いという印象。人間らしく生きたい!これが農的生活、田舎暮らしに向かわせている原動力に思えた。


ワゴン車で「里山・棚田見学」。千葉・房総にこんな山深い所があったのか!日本の原風景・里山や棚田の美しさを満喫しながらも、ちょっとわき道に入ると、放棄され、荒れ果てていく棚田が続く。一同シリアス気味。

「高野孟の21世紀的ライフスタイル」では、金中心経済の行き詰まりからの脱出方法としての農的生活が、実は、日本人の生活史から見てみると、なんら奇異なものではなく、漁師も農人も鍛冶屋も廻船問屋もほとんどみんな専業ではなく、田畑を耕したり、炭焼きをしていたり、家を自分で建てたりおよそマルチ的に生きていたのと似たようなもの。専業農家が登場して、農業一本で生計を立てたのは、ここ50年くらいのこと。時代の流れは、むしろ専業化にお構いなく農的生活派が再び台頭していると指摘。

「帰農の時代と地元学」では、ここんところ、都心での”日本ミツバチ”の養蜂にはまっている農文協の甲斐さんは、風土に合った日本ミツバチの習性、例えばお互いのノミのとりっこをする、風土に合った生物の性質が一つの環になっている。こうした、風土、環境、環が、”大人の食育”の切り口ではないのかと主張。

畑仕事の実習は、まずは、さつまいもと大豆畑の草取り。草ぼうぼうで、どこにさつまいもがあるんかいな?を草をみんなでどんどん抜くと、立派なさつまいもが出てくる。みごとになったさつまいも畑に一同満足気。

自然王国の農作業指導員の川名さんのミカン畑では、ミカンの摘果作業。ブルーベリー畑では、オイシイブルーベリーをごちそうになった。

豆腐の手づくり実習は、三班に分かれて豆乳作り、おから、ニガリ打ち。三班とも立派な豆腐が出来上がり、夕食のおかずに。

木下さんの「田舎暮らし成功の秘訣」は、実に楽しそうに自分の土地探し、家作りの成功と失敗の体験談を話される話術に、自然に引き込まれて、何人かの塾生は、鴨川への移住を密かに決めてしまったかもしれない様子。

二日目の夜は、夕食兼宴会。加藤登紀子さんも飛び入りして、一気に盛り上がったのでありました。

最終日「農的生活の期待と希望」では、かなりの参加者が、田舎暮らし、鴨川が身近になった様子。でも、当分は、東京と鴨川を行ったりきたりのスタイルを造り、気持ちの整理と具体的チャンスを作り出していくのが、確実な方法に思えた。


里山見学


高野講師の講座


甲斐講師の講座


草取り作業


摘果作業


夕食


豆腐作り



ふるさと回帰・里山帰農塾修了証


環境と農の時代という21世紀の足音を察知し、自分らしいライフスタイルを創造するきっかけをつかむための里山帰農塾で、あなたは、さつまいもや大豆の草取り作業で、草に負けないように立派に育って欲しいと願われたに違いない。ブルーベリーやミカンの摘果作業では、技術の大切さと、果樹の生命力が、秋には立派な実をつけるさまを想像されて、農業に楽しさを感じられただろう。豆腐作りでは、先人の生活の知恵を感じ取り、自分だって手づくり加工品がつくれるぞ!と密かな自信を持たれたかもしれない。
座学では、人類が直面する環境と生命の危機脱出方法に思いをはせ、自分の生き方・働き方を、定年帰農・青年帰農の実例とダブらせ、田舎暮らし・帰農生活者の悲喜こもごものユーモアの中に、真剣に自分を見つめ、自分の生き方を模索されていた。その姿に私達は、共感を覚えると共に、鴨川で感じ、学ばれたことが、これからの人生に生かされると確信する。


 あなたは、7月17日から7月19日まで、千葉県・鴨川自然王国で開催したふるさと回帰・里山帰農塾第六期生として、2004年度第2回初級講座の全過程を修復されたので、ここに、修了証を授与します。
2004年7月19日
ふるさと回帰・里山帰農塾
塾 長  高野 孟
農事組合法人 鴨川自然王国
NPO法人100万人のふるさと回帰・
循環運動推進・支援センター
理事長  立松 和平
第3回 家作り専科 2004. 8/11−15  text: 田中正治

●“コーヒー焙煎の作業場を建てたい”、“増築が出来ればいいな”、“とりあえず鶏小屋や物置が建てられれば”、“農機具小屋を建てたい”、“いずれ家を建てたい”という人たちが集まって「家作り専科」が始まりました。でも、都会でそれらを、ではなく田舎暮らしの中でそれらを、というわけです。

*都会では出来ではなく、田舎で1泊しながら生活全般を見直しながら鍼灸師をやりたい、という鍼灸師。人は“なぜ病気になるのか?”患者とともに考えたい男性。
*出来る限り自給自足の生活をしたい。そのために出来れば古民家をトントン改築するための基礎を学びたい女性。
*山と海がある房総に住んで、備長炭炭火コーヒー焙煎をやりたい、そのために、焙煎作業小屋を手づくりで建てたいと、すでに別のところで家作りの基礎コースを受講してきた男性。
*故・藤本敏夫の「ぼくの自然王国」を読んで共感し、“僕も自然王国を作ってみたい”と参加した男性。すでに土地があり農作業を開始していて、まずは、「農機具小屋」と「にわとり小屋」を作りたい精密機械会会社員。
*自給自足の生活をしたい、海と山がある房総の海沿いがいいな、麦・大豆・蕎麦を栽培して生活を立てたい、とりあえずにわとり小屋と物置が作れるようになりたいという女性。
*田舎暮らしと家が建てられるようになりたい!と“熱望“しているパートナーが、仕事の都合で参加できず、”お前代わりに行ってきてくれ“といわれて参加した女性。(パートナーは、最終日の閉校式の時に、やっと到着!)


●最終日、討論「農的生活の期待と希望」で、塾のカリキュラムの感想、意見を出し合いました。
“いい経験でした。自分でやってみようかなという気持ちが強くなった”“家作りって楽しいことなんだな”“自分ですこしやってみようかな〜と、いい勇気をもらった気がする”
“家を建てたい気がしてきた。睡眠4時間だったが疲れなかった”“こういう生活があってのかな〜、大工さんは親切だった、内容は思ったよりよかった”というようなプラス評価が出されましたが、問題点もいくつか指摘されました。

“専門用語を覚えるのは大変だった。塾の初日に、専門用語―”張り“”けた“かもい”・・・などを、実物を示しながら教えておいてもらえば、戸惑いがなかったかもしれない“という意見も出されました。これはもっともなことで、初日の第一講義で「専門用語解説」が必要ですね。幸い講義の場所”山小屋“は、大工と農家が半手づくりで建てたもので、”張りもけたもカモイも“ 全部丸見えなので、実物を見せながら、大工さんが説明してもらえるでしょう。
“土台作りからやりたかった。水平の取り方を覚えたかった。出来ればコースの前日に、自由参加で、土台作りのスペシャルコースがあったらいいのにね。もしそれが出来なければ、ビデオで土台作りを説明してほしい”という意見が出されました。
スペシャルコースは無理かもしれませんが、大工さん参加のビデオ会なら出来そうですね。

“図面を引く演習をやりたかった”。そうですね、確かに家を(小屋でも)立てる時のは、建てる前に、頭の中で設計し、完成図を描いてから、作業に取りかかるわけですものね。
これも大工さんに参加してもらって、夜の座学でやれそうですね。建設的ご意見をありがとうございました。塾生の皆さん、楽しかった5日間をありがとう。
塾生の誰かが、家(いや小屋でも)を建てるときのは、“練習台にしてしまいましょうね”
(^^)。

柱を立ててます
屋根を作ってます。
二日目・・・サッシの枠!はめちゃったりなんかして。
作業4日目・・・壁貼っちゃってます。
だんだん形になってきました。
ここまでできました!
暑い中皆さんお疲れ様でした。



ふるさと回帰・里山帰農塾修了証


環境と農の時代という21世紀の足音を察知し、自分らしいライフスタイルと家作りを創造するきっかけをつかむための里山帰農塾・家作り専科で、あなたは、工場出来合いの都市型・密封型住宅ではない、手づくりで伝統的な家作りの基本を体験し、その技術と考えを自分なりに身につけられたに違いない。
座学では、講師の里山家作りの夢や家作り体験記、建築士との対談の中に、自分の夢を重ねあわせ、真剣に自分の家作りと、生き方を模索されていた。その姿に私達は、共感を覚えると共に、鴨川で感じ、学ばれたことが、これからの人生に生かされると確信する。

あなたは、2004年8月11日から8月15日まで、千葉県・鴨川自然王国で開催されたふるさと回帰・里山帰農塾・家作り専科講座の全課程を履修されたので、ここに、修了証を授与します。

2004年8月15日
ふるさと回帰・里山帰農塾
塾 長  高野 孟
農事組合法人 鴨川自然王国
NPO法人100万人のふるさと回帰・
循環運動推進・支援センター
理事長  立松 和平
第4回 中級コース 2004. 9/22−26  text:宮田武宏


今回の帰農塾参加者は男女とも各3人の、合計6人の参加でした。入門コース、家作り専科や稲刈りなどに参加された方が4人で、全くの初めての参加者は2人のみ、という構成でした。畑を借りて2年目の方、千葉県夷隅町に土地を購入されている方など、すでに農的生活に入ろうとしている方が多く、実践的なプログラムに興味が集まりました。
 
●初日の1限目は、高野孟さんの講義「21世紀ライフスタイル」です。鴨川に土地を購入された高野さんが、これから家を建てるにあたって、どんな家を建てるか、という点を中心に講義は進みました。日本の伝統的な生活は、「目に見える範囲の生活をする」ということです。土間を置いて開放的な家を作り、生火をたやさず、風が家の中を通り抜ける、いかにも気持ちよさそうな家が出来そうな気がしました。また、今考えるべきことは、帰農して食料自給率を上げることではなく、目の前にあるものを食べたり、どのように作られたか、その背景がわかっているものを食べる、という食の「質」を確保することだ、と話されました。

●夕食後は、甲斐良治さんの講義です。「日本に農業はなかった!」という刺激的な言葉から講義は始まりました。甲斐さんの故郷の地域振興の話をきっかけに、現代の専門化された職業のあり方に疑問を呈されました。江戸時代には、農村でありながら、「目医者と火薬屋」という、なんとも不思議な兼業まであったそうです。農的生活、というのは、専門に一種類の野菜を作っていくだけのことではなく、いろんなものを複合させてやっていくことだ、と感じました。また、現在必要とされているのは、各産業だけで振興を図るのではなく、横断的に他業種との補完をすることである、そして、農的生活はそのような業種間の壁を取り払うキーワードになることを、具体例を交えて話されました。

●二日目の朝は、稲刈りです。藁で縄をなうところから始まりました。普段は一線で活躍されている方も、うまくなうことができず、なかなか苦労されていました。鎌の使い方、刈った稲の持ち方など、稲を刈る方法にも一つ一つ意味があります。「農業は美だ」という石田さんの話が実感できるほど、笹がけをした稲たちは美しかったです。

●昼からは、豆腐、納豆とこんにゃくを作りました。豆腐など、作り方は簡単なのですが、工夫できるところはたくさんあり、単純なものに奥深さがあることを知りました。ちなみに、塾生は2班に分かれ、スタッフも三尾さんと私でチームを作って、食べ較べを行いました。皆さんの評価で、スタッフが作ったものが一番「まずい」ということになり、参りました。次回はもっとおいしく作ります。どこにでも売っている身近な製品を自分で作るのは本当に興味深かったです。

●夜の講義は、加藤登紀子さんの「ニューレボリューション」です。
鴨川に帰ってくるとほっとする、という話から始まりました。自然には、自分が働きかけなくても、そこに存在するだけでいいという実感がある、と話されました。じっと座っているだけで、鳥や虫の声が聞こえ、落ち着くといいます。どんどん進んで行く環境汚染に対しては、打たれ強く立ち向かうしかない、という話でした。まずは自分ひとりで帰農生活を始めようとする男性に対しては、「そうよ。自立した関係でこそ愛は存続するのよ」と力強いお言葉。話は本質的な方向まで進んでいきました。

●3日目は、ドラム缶での炭焼きです。こちらも3人一組で作業を行いました。前日から
の豆腐チームと同じ組み合わせで、ますますチームワークは強くなっていきました。薪を並べ、後は温度が一定するまでひたすら団扇で扇ぎつづけます。出来あがった炭は、ドラム缶で作ったにしては素晴らしい出来上がりでした。「これでコーヒーを焙煎してみます」とお土産に持って帰った方もいらっしゃいました。出来上がりが楽しみですね。ぜひ結果を教えて下さい!

●昼からは、近くの山にある杉の間伐を行いました。生木を切るのはなかなか時間もかか
るし、力も使うしで、結構大変でした。それでも、木を切り倒すときは爽快です。片刃のなたを使ったのですが、どうしたら危なくないかの使い方を教えてもらい、道具を使うにちゃんとした基本があるのだな、ということを再確認しました。間伐後は、その木で階段作りを行いました。細い木で杭を作り、「かけや」という大きな槌で杭を打ち込んで階段を作ります。出来てしまえば何気なく歩く階段も、作る段階を経験すると感謝して登れるな、と思いました。

● さて、この日の夜は小田原から来てくださった下島さんの講義です。田舎で家を建てるのなら、おしゃれに建てたいね、という話でした。デザインもさることながら、土地の泥や竹など、本来タダであるもの、身近にあるものを使って家を建てるのが豊かな生活だ、ということでした。農的生活というのは、目の前にあるものを使って生きていくことなのだな、と感じました。講義後の質疑応答では、「自分の家をどう作るか」という具体的な話から、「日本の家はどうあるべきか」「家を建てるということの意味は」という形でどんどん本質的なところまで議論は進んでいきました。住むということはやはり根本的に重要なことなのですね。
 
● 四日目は農機具小屋作りの実習です。本職の大工さんがきてくださり、差し金の使い方から学びました。大工さんは、差し金一本あれば全ての線を引いてしまうそうで、その技術は面白いな、と思いました。理論的理解に重点をおくあまり、実際に差し金で線を引くまでに時間がかかってしまった人もいて、人にはいろんな取り組み方があるのだな、と思いました。途中から土砂降りの雨になってしまい、小屋作りを中断せざるを得なくなったのが残念でなりません。今度皆さんがいらっしゃるときにはもう完成しているはずですので、お楽しみに!

● 最後の座学は、木下さんによる「田舎暮らし成功の秘訣」です。木下さんは、田舎暮らしをするまでに苦労したことを結構話してくれたのですが、それすらもとても楽しそうに話されたのがとても印象的でした。田舎暮らしをするにあたって大切なことは、長期的な戦略をもつこと、楽観的に考えることなんだな、というのが実感されました。


今回、帰農塾のスタッフとして参加させてもらって、感じたことは現場でやってみるのはやはり重要だ、ということです。帰農、とか農的生活、とかいう言葉は最近ではいい響きになってきていますが、現場でやると口で言うほどたやすいことではない、というのが実感です。そんな中で、より充実した農的生活を送っていくためには、失敗を恐れずに、現場でこつこつと取り組んでいくことが必要だな、と思いました。
また、様々な社会的立場の人が参加してくださったため、ふとした時間にいろいろなお話を聞けるのがとてもありがたかったです。塾生たちも、いい情報交換が出来たのではないかなと思います。今後とも、いろいろな気付きの場となれるような場作りを準備していきたいと思っています。王国の畑もどんどんやっていきますよ~!!


塾長高野孟さん
甲斐良治講師
二日目、稲刈り終了後の集合
皆さん、お疲れ様でした。
二日目、午後からは豆腐、こんにゃく、納豆作り。
写真は圧力鍋で茹でた大豆に、納豆菌をまぶして
紙コップに入れているところです。
加藤登紀子講師
三日目の作業は炭焼きです。
こちらは、ドラム缶で作った釜に
薪を詰めているところです。
三日目、炭焼き終了後、杉の間伐を行いました。
伐った木は、一定の長さに切り階段の材料に。
下島恒雄講師
四日目、一日かけての小屋作りにチャレンジ。
地元の大工の指導の順調に建っていきます。
木議饒講師
四日目の夜。講師と塾生たちの交流会が始まりました。

5日間お疲れ様でした。
最後に、塾生とスタッフとで記念撮影。
暑い中皆さんお疲れ様でした。




ふるさと回帰・里山帰農塾修了証


環境と農の時代という21世紀の足音を察知し、自分らしいライフスタイルを創造するきっかけをつかむための里山帰農塾で、あなたは、稲刈りではずっしりとしたイネの重みに生命の重みを感じ、豆腐作り、納豆作りで、伝統技術の巧みさに感心し、小屋作りでは、自分で家は建てられるかも知れないという実感の端緒につき、炭焼きで先人の生活の知恵を感じ取られたにちがいない。
座学では、人類が直面する環境と生命の危機脱出方法に思いをはせ、自分の生き方・働き方を、定年帰農・青年帰農の実例とダブらせ、帰農生活者の悲喜こもごものユーモアの中に、真剣に自分を見つめ、自分の生き方を模索されていた。
その姿に私達は、共感を覚えると共に、鴨川で感じ、学ばれたことが、これからの人生に生かされると確信する。
あなたは、9月22日から9月26日まで、千葉県鴨川自然王国で開催したふるさと回帰・里山帰農塾2004年度中級講座の全課程を履修されたので、ここに、修了証を授与します。


2004年9月26日
ふるさと回帰・里山帰農塾
塾 長  高野 孟
農事組合法人 鴨川自然王国
NPO法人100万人のふるさと回帰・
循環運動推進・支援センター
理事長  立松 和平
第5回 中級コース 2004. 11/26−28  text:宮田武宏

今年度最後の帰農塾となりました。野菜くずの堆肥プラントを経営している人、ソニーを早期退職されて宮城県に土地を購入された人など、男性4人、女性1人、それにYaeさんを加えた合計6人が参加されました。

高野さんの講義は空間的に大きな広がりをもったものでした。私たちが見失っていたもの、新しく作ってゆこうとしているものは、江戸時代、もっと古くは縄文の昔から行なっていたのです。それを今の時代に合わせて取り戻す、ということに希望を感じました。

甲斐さんの講義では、地元学というのは「ないものねだりではなくあるもの探し」という言葉が胸に響きました。田舎に暮らしていると「あれもない、これもない」と考えがちですが、実は、「あれもある、これもある」と新たな発見の日々です。帰農塾と直接の関連はありませんが、私はここに来て既に56種類の蛙に出会いました。蛙がすめる、ということはまだ豊かな自然が残っている、ということだそうです。

木下さんは、満面のほほえみで田舎暮らしに退屈することはありません。とおっしゃっていました。

帰農塾入門コースは、23日と、非常に短い期間で行なわれ、農的くらしのほんのさわりの部分しか体験することができませんが、それでも、塾生の皆さんには新鮮な体験だったようです。

定植した玉ねぎの苗の実った姿を描くことができた、と話してくれた人がいました。今度買った土地の近くのお寺でYaeさんのライブをやりたい、という人など、多くの人が今後の生活に希望をもてたようです。一度しかない自分の人生を、自分の描きたい方向にデザインしてゆける、ということは素晴らしいことだと思います。

参加者の言葉の中に、「交流するということは、多様な視点を持つことだ」という言葉がありました。帰農塾に参加される人々は、それぞれ自分の人生を精一杯生きてこられた方が多く、私にとってはいろいろな話を聞かせてもらうだけでもとても刺激になります。各々の人が各々の持ち場で持てる力を発揮することができればどれほど素晴らしいでしょう。そんな活動ができる場作りをしていきたいです。

初日。まずは、自己紹介。 里山見学。
甲斐先生の授業。
二日目。畑作業。
畑作業。
たまねぎの苗を植えているところ。
豆腐づくり。
にがりで高めた投入を型に入れているところ。



ふるさと回帰・里山帰農塾修了証


環境と農の時代という21世紀の足音を察知し、自分らしいライフスタイルを創造するきっかけをつかむための里山帰農塾で、あなたは、玉ねぎの定植作業を通して、苗たちが寒さを乗り越え、春には立派な玉ねぎになるようにと願われたに違いない。畑とはいっても、様々な状況の土地があり、その畑に適した作業方法があることを知り、農業の奥深さ、楽しさを感じられたであろう。豆腐作りでは、先人の生活の知恵を感じ取り、自分だって手づくり加工品がつくれるぞ!と密かな自信を持たれたかもしれない。
座学では、人類が直面する環境と生命の危機脱出方法に思いをはせ、自分の生き方・働き方を、定年帰農・青年帰農の実例とダブらせ、田舎暮らし・帰農生活者の悲喜こもごものユーモアの中に、真剣に自分を見つめ、自分の生き方を模索されていた。その姿に私達は、共感を覚えると共に、鴨川で感じ、学ばれたことが、これからの人生に生かされると確信する。

あなたは、11月26日から11月28日まで、千葉県・鴨川自然王国で開催したふるさと回帰・里山帰農塾第五期生として、2004年度第5回初級講座の全課程を履修されたので、ここに、修了証を授与します。

2004年11月28日
ふるさと回帰・里山帰農塾
塾 長  高野 孟
農事組合法人 鴨川自然王国
NPO法人100万人のふるさと回帰・
循環運動推進・支援センター
理事長  立松 和平

 


http://www.k-sizenohkoku.com
kingdom@viola.ocn.ne.jp
Copyright (C) 2000-2004 Kamogawa shizen ohkoku All rights reserved.