田中正治
安房ルネッサンスMAP (masa訪問記)
笹谷窯(杉山春信) 鴨川市   更新日 2005.5.7

■text:田中正治

★鴨川の北西・金束の山の中、平家の落人の隠れ家のような空間に笹谷釜がある。釜の主は杉山春信氏。
山形県の雪深い小国町の生まれで、少年のころから画家が夢だった。”貧乏画家”として苦闘するも、メシは食わねばならぬと、1977年 鎌倉市の埋蔵文化財調査に従事。中世古陶に魅せられ、研究とともに作陶開始。はまってしまった。人生はわからないものなのだ。1988年 鴨川市に中世古陶を基本とした穴窯を、築窯当地の古来の名から「笹谷窯」と名付け開窯した。

★作品の展示場、陶芸教室、作品製作の場、2階の絵の制作場(今も少年の夢は追っている)、二つの穴釜・・・・など、ほとんど手づくりとは驚き。古民家の廃材を再利用して、自力で立ててしまったという。

★中世古陶は”穴釜”で制作されていた。土で作った5m程の登り釜なのだが、”登り釜”のよ うに中が部屋で仕切られていない。一つの部屋なので、炎が直接全体に廻る。炎の中で生まれた木の命をまとったやきもの、それが『木命衣』(もくめぇい)なのだ。

★ 実はぼく(田中masa)は、4年間笹谷釜の工房の2階に下宿していた。まあ、夜の11時ごろ、寝に帰るだけだったけど。夜中、作品と格闘している杉山さんに、ばかげた批評を飛ばしたりもした。彼は”おやじジャグの名手”なのだ。Q「今までに、苦しかったことはどんなことでした?」、A「そうね、食べ過ぎた時かな〜」。”おやじジャグ”ですよね。

★ 出来てしまうとその作品に関心がなくなってしまうらしい。Q「芸術作品を制作しているんですか?」、A「基本的には芸術作品。特に大きいつぼなどはね。でも、コーヒーカップは使ってもらうために商品としてつくっているよ」。僕も1−2度釜入れの時、蒔きを燃やすのをさせてもらった。とにかく熱い。一週間ぶっ通しで蒔きをくべ続ける。でも、炎って不思議ですよね。じっと見ていても飽きない。黄金色に輝いている。

★ 2004年から、杉山さんは、水田をやり始めた。それも4〜7反(1200坪〜2100坪)。Q[もう陶芸どころじゃないんじゃないの、杉山さん?] A「農業が作品に影響してくるかも知れないからね」。 『食と器の体験』 コース、現在募集中。

★ Q「陶芸をしている目的は?」、A「芸術作品で一発!という考えは全くない。人間生きていくために特別なことはない。自分がしたいことを出来る環境を手に入れたいだけだ」。「水田をやっているのも、何でも自給しようと思ってるんじゃない。地域で自給していけばよいと思っている。いろんな人の特技と作品・商品を地域コミュニティーでお互いに支えていけばいいんじゃないかな〜」。

★ 鴨川移住17年。去年、三人目の”空都(そらと)君”が誕生。”生活者的陶芸家””百姓陶芸家”は、しっかり大地に根を張りつつあるようだ。















 

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