田中正治
田中論文

「瀬戸内トラスト」


■text:田中正治

■date:2004.3.11

トラストってどういうこと?という疑問に答える好例に「瀬戸内トラスト」があります。今回はそれを紹介します。

1)瀬戸内地域の「ゴルフ場建設」に反対する人達が、編み出した戦術が「立ち木トラスト」です。

2)RUSTとは信託ー「信じて託する」と言う意味ですが、「立ち木トラスト」の場合、信じて託するのは「立ち木」です。すなわち、自分の土地をゴルフ場にしたくないと考える地権者が、"一緒にゴルフ場開発に反対して欲しい"という想いを込めて、市民に「立ち木」を託すのです。

3)「立ち木」を託された側も、その「立ち木」を"これまでと同じように管理し、この木の寿命が尽きるまで、しこに立たせてほしい"と願って、又もとの地権者に、その木の管理を託すのです。

4)このように、「立ち木トラスト」の場合は、自然を守りたい地権者と市民が、一本の「立ち木」を間にして、相互に信託するのです。その"利益"は、投資信託のような経済的なものでなく、地権者の側では"ゴルフ場反対に多くの人達の支援が得られること"。一方、市民の側では、"ゴルフ場開発阻止に協力したい"という想いを具体的形で表せることです。最終的には、双方に共通した"ゴルフ場開発ストップ"という成果と"自然を守ることが出来た"という喜びと満足がえられることです。

5)一本の「立ち木」の"売買"契約を地権者と市民が結ぶわけですが、そのトラストの"橋渡し"をしているのが「環瀬戸内会議」です。この「会議」が以下の条件で、ゴルフ場反対の地権者から買いうけます。

● 「環瀬戸内会議」は立ち木を伐採しない。
● トラストの趣旨に賛同する第三者にのみ売却する。
● 運動の目的が達成されたら、地権者に無償で返却する。
● 立ち木の管理は元の地権者が今までどうり実施する。

6)そして、その立ち木を、「会議」は、以下の条件で全国に向けトラスト会員を募集します。

▲買主は、買った立ち木を伐採できない。
▲買主は、買った立ち木を第三者に譲渡できない。
▲ 運動の目的が達成されたら、「環瀬戸内会議」に無償で返却する。

7)立ち木をトラストすると、なぜゴルフ場開発が阻止できるかということですが、立ち木は土地とは独立に、立ち木だけを売買したり、担保にする慣行があり、土地と切り離して、立ち木に独立の物件が成立することを法律が認めています。「立ち木ニ関スル法律」(明治42年)。

8)それと共に、例えば、一本でも慣習として行われていた、例えば木の皮をはいで名前を書いたり、刻印を押したり、札をかけたりする方法(明認方法)を行えば、それで充分と大正年間の大審院の判決は認めています。現在、各地の立ち木トラストは、この明認方法の一つである、札かけ(トラスト会員が、自分の名前を書く)を行って、その立ち木が、グルフ場開発に反対する人間の所有であることを、公示する方法をとっているのです。
 


http://www.k-sizenohkoku.com
kingdom@viola.ocn.ne.jp
Copyright (C) 2000-2004 Kamogawa shizen ohkoku All rights reserved.